出雲信仰と出雲大社教についての話

出雲大社と出雲大社教

 出雲大社が神社としては珍しく、「出雲大社教」という教団を持っていることについて、一般の方にはあまり知られていないようです。1990~2010年あたりには宗教団体と聞くだけですべて悪い集団、おかしな集団と思われた時代がありましたが、そのため「出雲大社教?それって新興宗教ですか?」と否定的な反応をされる方もおられました。しかし、出雲大社教はいわゆる新興宗教と言うものとは違い、昔からの広まっている出雲信仰が元になって出来たものなのです。

出雲大社の御師

 その昔、御師(おし、おんし)と呼ばれる人たちがいて、それぞれの神社の信仰を全国に広めていました。まずは今の和歌山県の熊野三山の御師、そして伊勢神宮、稲荷、石清水の御師などが有名ですが、出雲大社の御師も戦国時代から活発に布教を行っていました。

 御師はどういうことを行っていたかというと、季節が来ると出雲から全国各地に行き、お札を配ったり、あるいはご祈祷をしたり、大国主大神についてのお話をしたりして出雲大社についての信仰を広めていました。信仰が広まった結果、その地で信徒の集まりである「講(こう)」が作られると、講員が出雲大社に参拝することを手引きをしたり、また、出雲での宿の提供をしたりして出雲信仰を広めることに務めました。

 記録によると出雲大社の御師の活動範囲は中国四国地方だけに限らず、関東や東北地方まで広がっており、江戸時代末期には蝦夷地の函館にまで信仰が広がっていたようです。

明治維新と国家神道

 明治維新が起こり、世の中は大きく変わりました。祭政一致、日本の古来の姿に戻るべき、という思想が明治維新の原動力の一つでしたので、神社は国家の管理下に入ることになりました。初めのうちは昔ながらの神の道を国民に布教をしようとしていたのですが、なにせ慣れていないことでしたので結局うまくいかず、明治十五年には神官と教導職の分離がなされ、いわゆる国家神道体制が引かれることになりました。

 国家神道というと「国家・政府が、神道という宗教を国民に押しつけた」と思われている方もおられるかもしれませんがそれは全く異なり、実は「神社は宗教ではありません」という思想を国民統合のために利用した、というのが国家神道です。神社は宗教ではなく、国家の宗祠であり、神社に参拝することは宗教行為ではなく、国民の道徳である、というのがその思想でした。

 そして宗教としての神道は教派神道という形で別の団体が行う、ということになりました。これは深く考えられてできたものではなく、当時の日本の宗教界の混乱を取りあえず納めようという、政治的妥協によってできたものでした。

一派特立

 この流れに敢然と反対したのが、当時の出雲大社国造、宮司の千家尊福(たかとみ)公でした。まずこれより前に、尊福公は出雲大社の氏子を中心として「出雲大社敬神講」を結成し、大国主大神のご神徳とその精神の布教を開始しました。そして「出雲大社教会」、のちに「出雲大社教院」と改称され、教勢がどんどん広がっていました。

 そんな中、国家神道では神社の神官が布教活動することは禁ぜられ、また、葬儀に携わることも禁止されました。出雲大社、大国主大神の信仰、そして「敬神崇祖」という神道の教えを広めていくことで、日本の国を良くしていくべきと考えていた尊福公はこのままでは布教が出来ないと、出雲大社の宮司を辞職し、「神道大社派」(すぐのちに「神道大社教」)を特立し、その管長に就任して布教を行うことになりました。

 他の神社でも同じように講社を設けて布教したところもありましたが、出雲大社ほど大きなものにはなりませんでした。例えば伊勢神宮においても、伊勢信仰を基盤とする神宮教が結成されましたが、諸般の事情でのちに神宮奉斎会という形に改められました。

 昭和になり大東亜戦争に敗戦し、国家神道体制も終わりとなりました。神社も国家管理を離れ、それぞれが宗教法人として活動していくことになりました。出雲大社も昭和二十六年に出雲大社と出雲大社教が一緒になって活動するという、明治十五年以前の形に戻ることになりました。

現在の出雲大社教

 現在は出雲大社を宗祠と仰ぎ、出雲大社の信仰、教えを広めるための布教組織として出雲大社教は活動しています。
 出雲国造は出雲大社宮司として大国主大神の祭祀を行い、同時に大神の御杖代として教団の中心に立ち、管長は国造の下にあって教務の全般を統率しています。現在は第八十四代の千家尊祐国造が出雲大社宮司、千家隆比古出雲大社権宮司が出雲大社教管長としてお仕えされています。

 元来、出雲信仰を持つ人たちの集団、大国主大神を敬仰する集団が集っているところもあり、教団といっても一般的に考えるような金太郎飴の組織ではなく、出雲大社教の各おしえのにわ(分祠、分院、教会、講社)によって、活動内容が異なることがあります。このあたりは大らかな神さま、大国主大神の教団らしい、懐の深いところと言えます
 ある教会で行われていることが、必ず他の教会でも行われているとは限りません。このサイトの内容もあくまでも出雲大社紫野教会の活動になります。

 出雲大社教のおしえのにわは全国各所に広がっていますが、お近くの分祠、分院、教会、講社をお知りになりたい場合は、出雲大社教教務本庁(TEL 0853-53-2063)にお問い合わせ下さい。

出雲大社についての読みもののページへ戻る

↑ PAGE TOP