宗教団体は無税ではありません

実は無税ではない宗教団体

 宗教団体(宗教法人)は無税と思っている人が相当います。というかそう思っている人の方が多いようです。ですが、実際には無税ではありません。このような勘違いが起こるのは日本人があまり税金について知らないからかもしれないと考えています。

 その昔、留学と称して半年ほどアメリカに遊びに行っていたことがあります。語学学校に通っていましたが、ある時アメリカ人の講師が「日本の税金はどうなってるの?」と質問してきました。日本人は社会人経験のある女性が多かったのですが、みんな「消費税は5%で…」で止まってしまいました。私がいくばくか補足しておきましたが、私もよく知っていたわけではなく、ようやく理解したのは自分で会社を起業して、その辺りの処理を全部自分でするようになってからでした。大半の日本人が確定申告しないサラリーマンですから、年度末調整の緑色の紙を出すくらいで、税金と年金と健康保険料が取られる金額が決まり、最終的に入ってくる金額も決まってしまいます。節税の余地もあまりないですから、結果として、あまり税金に詳しくないのも自然なことです。これは余談でした。

所得税がかかります

 まず、宗教家個人への給料には所得税がかかります。
 さて、自分が会社を作ったと考えてみてください。社員は自分一人、資本金も自分が全部出したので、株主も自分一人です。完全に一人の会社ですが、この会社でビジネスを始めて給料を取ると、形としては株式会社○○という法人から自分に給料が払われるということになります。(関わっている人間は一人だけなので、不思議な感覚がしますが。)
 宗教法人も同じです。一人神主、一人僧侶であっても(他に責任役員、総代、信徒がいますから完全に一人ではありませんが)、宗教法人から給料をもらうという形になり、そこには所得税などサラリーマンなどとまったく同じ税金がかかります。
 檀家がたくさんあって、収入が多いお寺の僧侶が、給料を年1,000万円もらえば、会社員で年1,000万円もらっている人と同じだけの所得税を取られるし、貧乏神主だと収入が少ない人と同じように、わずかしか所得税を払っていないということになります。
 僧侶でも神主でも大きなところで働いているような人は会社員と変わらないですし、小さなところで自分が宮司や住職の場合は自営業とほぼ同じような感覚です。自営業だと個人の財布と法人の財布がごちゃごちゃになりがちなところがあります。宗教法人でも同じではありますが、だからといって個人のものを何でもかんでも宗教法人名義で落とせるわけではありません。最近は税務署が宗教法人にも厳しくなってきています。
 「お坊さんは高級車に乗っている」というイメージがありますが、お寺の名義で買っているわけでなく、給料として所得税を引かれた個人のお金で買っているわけです。元々それだけの給料が出せるくらいに寺院に収入があるからできるわけですが。

宗教行為と収益事業

 宗教法人による宗教行為には消費税がかかりません。お供え(お布施)、祈祷料、お札やお守りの初穂料などです。株式会社などは一年運営して決算を行い、収入から費用を引いて残った利益には法人税がかかりますが、宗教法人の宗教行為にはかかりません。
 そう聞くと、「なんでも全部宗教行為ということにして商売すればいいのでは!」と思いついた人がいるかもしれませんが、そうは問屋が卸しません。宗教法人が商行為のようなことを行うと、それは「収益事業」とされ、販売したものに消費税が掛かりますし、利益には法人税が掛かります。
 なお、消費税が掛からないと聞くとすごい儲かりそうな気がしますが、宗教法人が一般の会社などから購入する時は消費税を払わなくてはなりません。お守りを業者から仕入れた時に消費税は払いません、というわけにはいきません。

 収益事業に当たるかどうかという区別には指針があります。お札やお守りは該当しないのはもちろんですが、例えば絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花などを市販価格なみに出すと収益事業になってしまいます。それから、参拝者用の駐車場であっても、コインパーキングにすると収益事業に該当し、その収入で利益が出れば法人税がかかります。
 法人税は一般法人が25.5%のところ、宗教法人など一部の公益法人は19%となります。得している、といえばそうですが、事業内容によっては別途株式会社を作って運営した方がよいのではないか、と言うこともあるでしょう
 また、宗教法人が宗教用途で使用している土地建物には固定資産税がかかりません。これは大きいですが、有料駐車場にしたり、マンション建てたり、他の人に貸したりすると、固定資産税がかかります。

そんなうまい話はない

 「宗教法人は無税らしいので、スーパー○○神社にして、食品や生活雑貨もすべてお守りです、と称して販売すれば、消費税の差額分は得するし、どれだけ儲けても法人税がかからない。入り口に鳥居立てて中に賽銭箱置いてスーパー全体を神社ということにすれば、固定資産税もかからないのでは?」ということは結局できないわけです。実態として企業の商売のようであれば同じように税金がかかるということです。
 不動産取得税も境内地として購入する土地にはかかりませんが、関係ない土地を購入して売却することには同様に掛かります。ですから境内地ということにして頻繁に売り買いすればそれは収益事業と認定されてしまいます。
 消費税率が上がっていきますから、販売に消費税がかからないというだけで宗教法人を使えるのでは?と思う人が増えてくるかもしれません。しかし、世の中そんなにうまい話はないということなのです。

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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
・ツイッター@nkjm_tkhr

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