神社と経営

神社と経営

 他の業種の方とお話しして、筆者が神主であることを告げると、「神社はどうやって、どれくらいの収入があるの?」ということに非常に興味を示されることがよくあります。個人的には神道の信仰についての質問があれば嬉しいのですが、なにせこのお金と切っても切れない世の中ですし、当然と言えば当然なのかもしれません。

神社の概況

 現在、全国の神社数は約80,000社、神職数は約22,000人と言われています。宗教法人については各都道府県が管轄していますので、正確な数字が出るはずですが、しかし、実際には宗教法人格を持っていない神社も意外とあり、それらは集計から洩れます。個人や団体が持っているお社も同じです。また、神道教会という形をとっているところもあったりするため、正確に全国の神社数はこれですとハッキリした数は出ません。

 神職数についても、大半は宗教法人神社本庁の発給する資格を所有していると思われるので、その数字を基本としているのでしょう。しかし、その他教派神道の発給する資格で活動している人もいます。
 また、神職資格を所有していても、必ず奉仕しているとは限らず、普段は他の仕事をしている人もたくさんいます。定年した親が宮司として勤めているが、そんなに収入はないので、自分は会社員として勤め、神職歴をつけるため神社に神職として登録して、大きなお祭りの時は奉仕する、というような例も珍しくありません。

 宮司の数は2004年は10,776人(井上順孝『神道入門』平凡社新書)となっています。神職の半分が宮司、宮司は一人当たり平均8社持っている、ということになりますが、その平均値にはあまり意味がありません。都市部の大きなお社では神職数が何十人もいる神社もありますが、農村部では集落に一つずつお社があるような所も多く、収入も少なく、一人の神職が30、40社も宮司を兼任しているのも珍しくありません。なかなか統計というのは難しいもので、実態を表さないことも多いように思います。

 一方、全国の僧侶数は約100,000人だそうです。神社/寺院数はあまり変わらないのに、僧侶数の方が圧倒的に多い、ということは、簡単に言えば神社の収入が少ないのでそれだけの人員しか維持できない、ということになります。
 やはり寺院は葬儀、法事による収入がかなり大きいということでしょう。

神社の収入

 神社の収入でまず最初に思いつくのが賽銭ですが、初詣に大勢の参拝者が訪れるような大きな神社では相当の額になるようですが、割合で言えば実はそんなには大きくありませんし、そもそも参拝者数が限られているような小さな神社ではその額もしれています。
 
 神社の収入のうち、最も大きいのは祈願料(祈祷料)だと言われています。前掲『神道入門』によると「旧官国幣社では祈祷料の占める割合が、平均して約六割を占める。これに対し村社や郷社では氏子崇敬会費が半分以上を占める神社が多くなる。」とのことです。(第二次大戦前は神社に社格が設けられており、だいたい旧官国幣社は大きな神社で、村社や郷社は小さな神社とお考え下さい。)
 祈願料とは厄払いや七五三、縁結びや商売繁盛といった個人あるいは団体が行う祈願です。祈願は個人でも最低五千円くらいからですから、賽銭よりは遙かに一人当たりの金額が上なので、トータルの額として大きくなります。小さな神社では個人祈願は少ないですが、それでも地鎮祭などの収入は重要な収入になります。
 また、神社のお札である神札やお守りの収入も重要な収入となります。

大きな神社、小さな神社

 そもそも、神社は大きな神社と小さな神社の差がかなりあります。大きな神社は何十人も神職がいて、その他職員を含めれば100人を超えるようなところもありますし(それくらい大きな神社は限られますが)、小さな神社は専任の神職がおらず、一人の神職が何十社も兼任しているところも多いです。近くで「この神社いつも人がいないなあ」と感じたことがあるかもしれませんが、そのような神社は神職は常駐しておらず、いつもは近くに住む氏子の方が管理されているところがほとんどです。
 専任の神職がいても、実は公務員や会社員などを兼業していたり、あるいは退職して年金生活をしている人が宮司を務めている、という神社も少なくありません。収入も少なく、休みも少ないので、「神主は食わんぬし」などという言葉が自嘲的に語られてもいます。

 では、大きな神社は左団扇かというと、単純にそうでもありません。というのも、神社は木造建築がほとんどですから、建て替え、あるいは大規模な修理が定期的に必要となります。それぞれの神社は遷宮の期間があり、そして次期遷宮に向けてお金を貯めていくわけですが、とにかく大きな金額になります。一度ではまかなえませんので、氏子、崇敬者、企業、一般の方々から寄付を集めて遷宮を行うわけです。
 これが有名な神社や氏子の多い神社ならまだよいのですが、地方で氏子も企業も少ないとなると大変です。この神社は境内が広いけどやや荒れ気味だな、と感じたことがあるかもしれませんが、それは予算が回らないからなのです。

神社の今後

 今後はどうなっていくかについても、正直なところ厳しいものがあります。
 一つはご祈願(祈祷)をする人が減っている、ということです。スピリチュアル、パワースポットブームでここ数年神社にお参りする若い人の数が増えているのは間違いありませんが、ご祈願をする人は多くありません。反対にご祈願などに熱心だった高齢者は減少の傾向にあります。地鎮祭などでも昔はするのが当たり前でしたが、現在は都市部ではする方が少なくなりつつあります。

 小さな神社では氏子崇敬会費が多くを占める、ということですが、農村部では過疎化により氏子数が減少しています。また都市部では氏子意識のない人も多く、会費をもらうのはなかなか簡単ではありません。
 
 ということであまり明るい状況ではありませんが、昔のように朝廷や大名が出してくれたり、あるいは自分で領地を持っていたり、ということはもうありません。信仰心のある一般の方々からお金を頂いて運営していくことになります。
 やはり人々にご神徳を伝えていくという努力を、神職がこれからも続けていく、その結果として人々から必要とされ、お金も集まり、神社が運営されていくのだと思うのです。

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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
・ツイッター@nkjm_tkhr

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